1人取締役(兼代表取締役)の株式会社で新たに取締役を就任する場合、添付書類として株主総会議事録等の通常書類に加えて代表取締役を選任した互選書を添付するのかについてお話します。
今回依頼を受けた会社は、代表取締役の選任は定款の定めに基づき取締役の互選によって定めるとされており、現在の取締役が引き続き代表取締役となる事例です。新たに就任する取締役は平取締役となるケースです。
そもそもの話として、取締役会非設置会社においては、会社法上取締役の中から代表取締役を定めない場合には、取締役は各自会社を代表するとされています。いわゆる各自代表というやつですね。
さらに、取締役の中から代表取締役を定める場合には、会社は、次の方法によることができ、その場合には、次の方法により定められたもの以外の者は会社を代表しなくなるとされています。①定款で定める方法②株主総会の決議によって選任する方法③定款に、取締役の互選により代表取締役を定める旨を記載したうえで、取締役の互選によって選任する方法の3つがあります。(ちなみに③の場合、定款の変更をしない限り②の方法をとることはできないと解されています。)
話を戻すと、今回の事例では、取締役会非設置会社で新たに取締役が就任する場合なので、原則、各自代表になりますが、代表取締役を③の方法にて選任する会社なので、実体上、『取締役の互選書』の作成が必要となります。
しかし、この互選書が登記申請の添付書類となるかについては、結論として【不要】ということが分かりました。理由としては、登記事項に変更がないからということみたいです。
つまり、実体上は互選書の作成は必要になるが登記申請の添付書類にはならないということですね。
近い事例でいうと、取締役会を廃止して従前の代表取締役を取締役の互選により選任した場合、当該代表取締役には登記事項に変更を生じないとされるので、登記実務上、定款変更にかかる株主総会議事録を添付すれば足りるとされています。つまり、互選書は添付書類にならず、登記事項に変更が無いのであれば登記申請の添付書類にならないといえます。
今回の事例は、手続きとして取締役1名を選任する場合(簡単に考えてました・・・)だけど、根拠を調べてみると奥が深いなと思った案件でした。
令和5年1月6日 司法書士 梶原 司