外国在住の相続人の所在調査について


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遺産分割協議を行う相続人に外国在住の相続人がいる場合、この相続人にも遺産分割に協力してもらう必要があります。

連絡が取れる間柄であれば問題ありませんが、連絡が取れない場合にどのような手続きを行うかが頭を悩ませます。

親族の中に年賀状等でやり取りをしている人がいないかなどを確認したりもします。

ここまでして所在が分からない場合は、①不在者財産管理人の選任②失踪宣告③遺産分割調停(遺産分割の審判)を検討することになるのですが、所在を調べる方法の中に、外務省が実施する「所在調査」というものがあるのをご存じでしょうか?

この「所在調査」とは、海外に在留している可能性が高く、長期にわたってその所在が確認されていない日本人の連絡先等を確認する行政サービスのことです。(※外務省HP参照)

実際に、過去1度だけ利用したことがありますが、添付する書類の取り付けや回答時間にかなりの時間がかかりました。ブラジル在住の相続人で、本人の同意が得られず所在が不明となりその他の手続きをとることとなりました。

以下、外務省のHPより抜粋になりますが、①調査対象者(以下「被調査人」と呼びます。)は、生存が見込まれる日本国籍者に限る。②本調査は、原則、配偶者及び三親等内の親族(三親等内の血族及び姻族)からの依頼から行える。③本調査依頼は、連絡先がわかっているにもかかわらず単に親族間で連絡をとっていない事情が認められるとき、あるいは連絡可能なすべての親族や知人に所在確認を行っていない事情が認められるときには行えない(本調査は、親族間において長きにわたり連絡がつかない状態が続いていて、所在も親族間で確認できない場合に限る。)。④在留届及び旅券情報から被調査人の連絡先が判明し、連絡がついた場合、個人情報保護の観点から、被調査人に、調査依頼人(以下「依頼人」と呼ぶ。)の氏名、調査の趣旨・目的を伝えたうえで、依頼人への連絡先等の通知について被調査人本人の同意を得る必要がある。本人の同意が得られない場合、連絡先は回答できないとされている。⑤本調査は、依頼を受けてから回答までに数か月かかる場合がある。⑥調査依頼に際しお送りいただく書類は還付できない。⑦本調査における「判明しなかった」との結果は、被調査人が海外に滞在していないことを証明するものではない。とされています。

また、調査依頼のための必要書類として戸籍の原本を求められこととなります。相続登記申請に添付する戸籍でもあるため、「所在調査」を行うのであれば、相続登記申請分と合わせてもう1通必要になることになります。

この制度は、必ず所在を教えてくれるわけではなくて、本人の意思を確認したうえで請求者である親族に開示してよいとされた場合にのみ所在を教えてもらえるため注意が必要です。

所在が不明となるとやはり【不在者財産管理人の選任】や【失踪宣告】の手続きを取らざるを得ないです。

行方が分からない相続人が海外にいる場合は、これらの方法を検討していきます。

こうしたことからもやはり早めの相続登記が必要だなとしみじみ思いました。

令和5年1月7日 司法書士 梶原 司

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